ようやく目的の組成比になる試料が完成し、TEM(透過型電子顕微鏡)での観察となった。試料名はCo(Pt)-ITOというもので、酸化インジウムと酸化スズ(ITO)に微量の金属元素、Co, Ptを加えたものだ。Ptを加える量によって、この試料の性質が大きく変わる。性質というのは磁気抵抗の値であり、最適な組成比になると、350℃付近で抵抗値がかなり大きくなる。この特性が、近年発達してきている磁気ヘッドと呼ばれるものだ。この温度付近での結晶の変化を、TEMを用いて観察する。私の研究は、次の世代の磁気ヘッドの技術にかかわるものである。

そこで、本題の試料観察。まず、室温から300℃までの間で、組織が変化しないことを確認する。これによって、室温から300℃までの間で磁気抵抗が変化しないことを、組織が同じという点で確認する。その後、試料の温度を20℃ずつ上げ、10分間組織の変化具合を観察する。その後、結晶の様子を写真に取り、回折パターン等を見て組織が変わっているかどうかを確かめる。ところが、380℃までいったところでTEMの調子が悪くなった。見ている場所を変えようとしても、その場から動かなくなってしまったのだ。TEMに詳しい方々はみな帰ってしまっていたので、今日の実験は終わり、明日再開することになった。

明日行うこととしては、まずTEMの修理。助手の方に直していただきたい。その後実験を再開し、400℃、500℃での変化を確認する。その後、写真撮影用として改めて試料を換え、再開する。さまざまな温度で合計50枚程度写真をとった後、現像を行い、スキャナでPCに取り込む。その後、室温と300℃での写真を見比べ、組織が変わっていないことを確認する。そして、400℃までの各温度での組織の変化を見比べる。そして、500℃での組織はどうなっているかを確認する。

これによって、私の論文は完成するはず。考察に関しては明日をお楽しみに。